「クラシック作曲家入門」今回は前回紹介したモーツァルトの弟子でもあるベートーヴェンについてご紹介します!
ベートーヴェンは「楽聖」という称号が用いられるほど、後世に影響を与えた偉大な作曲家です。
その独自性があり革新的な音楽を生み出す豊かな感受性をもつ一方で、非常に気難しく繊細な気質をもっていたベートーヴェン、今回はそんな彼の生涯や代表作についてご紹介します。
「ベートーヴェンの名前は知っているけど、どんな人物かあまり知らない」という方もこの記事を読めばベートーヴェンについて詳しくなれますよ!
【この記事でわかること】
- ベートーヴェンの生涯について
- ベートーヴェンが後世に残した功績
- ベートーヴェンの代表作
それでは早速見ていきましょう!
ベートーヴェンの生涯
ベートーヴェンは非常に気難しい性格で、癇癪持ちだったと言われています。
その一方で、豊かな感受性とあふれ出る創造性をもつすばらしい作曲家でした。
まずは、そんなベートーヴェンの生い立ちをご紹介します。
生い立ち
ベートーヴェンは1770年12月、ドイツ中西部のボンで生まれました。
父親は宮廷のテノール歌手で、モーツァルト父子を理想として3歳のころからベートーヴェンに音楽教育を施しました。
これが功を奏し、モーツァルトは幼いころから類まれなる音楽の才能を発揮しました。
しかし、父親の暴力的ともいえるスパルタな指導はモーツァルトの人格形成において陰りを残しました。
一方でピアノの腕前は確かで、16歳の時にモーツァルトの前で演奏をしたベートーヴェンは彼から大絶賛を受けたとも言われています。
初期
モーツァルトは20代前半はピアニストとして名をあげながらも、作曲活動にも精力的に取り組み、25歳にして自身最初のピアノ協奏曲を完成させました。
その他にも「交響曲第1番」「第2番」などを次々と作曲し、自分の色を反映した作品を生み出し、順風満帆な作曲家人生をスタートさせました。
しかし、20代後半になると、耳に不調がではじめ、30代に差し掛かると日常生活に支障が出るようになります。
中期
聴覚の異常の進行が進んだモーツァルトは遺書を書くほどに追い詰められました。
しかし次第に彼は音楽への情熱を取り戻します。
その後、創作意欲の赴くままに「交響曲第3番《英雄》」や、唯一のオペラ作品「フィデリオ」などを書き上げます。
1809年には、不朽の傑作と名高い「ピアノ協奏曲第5番《皇帝》」を完成させました。
その他にもベートーヴェンはこの時期に多くの名曲を生み出し、「傑作の森」と呼ばれる全盛期を迎えます。
後期
40代半ばになったベートーヴェンの聴力は著しく低下し、ほとんど何も聞こえなくなりました。
しかし、この時期にもベートーヴェンは作曲に真摯に向き合い、宗教声楽の最高傑作として名高い「ミサ・ソレムニス」や、代表作ともいえる「交響曲第9番」を完成させます。
この時期の彼の作品は、独創的で彼の心情を深く反映していました。
晩年になると、肺炎などの病気を併発したベートーヴェンは1827年3月に永眠しました。
彼の類まれなる衰えなかったそうです。
ベートーヴェンが残した功績を2つ紹介!
続いては「楽聖」と名高いベートーヴェンが残した偉大な功績についてご紹介します!
ベートーヴェンの革新的で型破りともいえる数々の楽曲は後世の芸術家たちに大きな影響を与えました。
①「交響曲」をメジャーな存在にした
ベートーヴェンは、第1番~第9番まで数多くの交響曲を残し、現代でも音楽界で存在感を残しています。
彼の交響曲は、それ以前の交響曲では取り入れられなかった「歌」を導入し、交響曲において「詩と音楽を融合」させたことが大きな特色です。
これは後世の作曲家が交響曲を作る際に大きな影響を与えました。
②新しい「ソナタ」を生み出した
ベートーヴェンが活躍した当時、主流な作曲形式であった「ソナタ」ですが、彼は既存の形式を発展させたり、形式に当てはまらない自由なソナタを作曲しました。
これにより、「ソナタ」はより大規模で自由なものになり、音楽家に衝撃を与えました。
ベートーヴェンの印象的なエピソード3選!
ベートーヴェンは音楽家として偉大な功績を残した一方で、気難しい性格で数々の印象的なエピソードを残しています。
今回はその一部をご紹介します!
①大のコーヒー好き、豆はきっちり60粒
ベートーヴェンは代のコーヒー好きで、毎日コーヒーを飲んでいました。
そしてコーヒーを飲むときは、いっぱいに入れる豆の数を「60粒」と決め、一粒一粒数えていたそうです。
繊細で神経質なベートーヴェンの気質をよく表してエピソードですね。
②生涯で約80回も引っ越した!?
ベートーヴェンは頻繁に引っ越しをしたと言われており、35年間で79回も引っ越しをしたそうです。
これは、「半年に一回」は引っ越しをしていたことになります。
ベートーヴェンの気が短い性格がゆえに、このように頻繁に住居を変えたのかもしれません。
③浮浪者と間違えられ逮捕されたことも!
ベートーヴェンを言われると、音楽室で飾られている肖像画をイメージする人も多いのではないでしょうか。
肖像画に描かれているように、ベートーヴェンはもじゃもじゃの髪の毛で、普段は着るものにあまり頓着がなかったそうです。
そのため、浮浪者と間違えて逮捕されたことがあるそうです。
ベートーヴェンの代表作をご紹介します!
最後にベートーヴェンの代表作を10作ご紹介します!
「交響曲」や「ピアノソナタ」をはじめとして、数多くの作曲形式で先進的な作品を生み出したベートーヴェン。
その創意に満ちた数々の名作を音源と共に、作曲の経緯や楽曲にまつわるエピソードを解説します。
①交響曲5番(運命)
この楽曲が作成されたのは1800年ごろで、当時音楽はそれまでの貴族や王族のためのものから、庶民にも広く聞かれる存在へと転換期を迎えていました。
この楽曲は冒頭の部分があまりにも有名なので、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか?
この冒頭のメロディーは動機(モチーフ)として楽曲の中で繰り返し登場し、印象的なので「運命」という通称がつけられました。
②交響曲第6番(田園)
この楽曲は交響曲第5番「運命」と同時期に作曲され、同じ日に初演を迎えました。
楽曲の通称である「田園」はベートーヴェンの交響曲の中で唯一本人によってつけられた通称です。
ベートーヴェンはこの楽曲を通じて、自然とともにいることで呼び起こされるやすらぎや喜びなどの感情を表現しようとしたと考えられています。
③交響曲第7番
ベートーヴェンの交響曲といえば前述の第5、6番そして第9番の印象が強いかもしれませんが同じくらい傑作とされているのがこの第7番です。
当時先進的な作風だった第5、6番と比較すると第7番は古典的な形式にのっとった楽曲ですが、音字リズムをたっぷりと繰り返す形式は、ベートーヴェンの個性が光っています。
この楽曲は初演の数日後に再演が行われるほど、発表直後から人気でした。
④交響曲第9番第4楽章
日本人にとってはこの楽曲は年末の風物詩といえるでしょう。
「第九」が日本で年末に演奏されるようになったのは1940年の大みそかにラジオで放送されたのがきっかけといわれています。
この楽曲の特徴はそれまで交響曲には用いられなかった「合唱」が入っていることで、それがこの第4楽章です。
⑤ピアノ協奏曲第5番「皇帝」第1楽章
この楽曲はベートーヴェンによって作られた最後の協奏曲であり、その雄大な曲風から後世に「皇帝」という通称がつけられました。
第1楽章では、ピアノの独奏とオーケストラの総奏が繰り返されるのが特徴的です。
通常「協奏曲」といえばピアノ奏者の即興演奏の部分がありますが、この楽曲はそれを取りやめてベートーヴェン自身が楽譜に書いたとおりに弾くように指示されているのも独特です。
⑥ピアノソナタ第14番(月光)
通称「月光」と呼ばれるこのソナタは、第1楽章はテンポが速いことが通例だった従来の形式と異なり、ゆったりとしたテンポで始まっていることが印象的です。
ベートーヴェンはこの楽曲を一人の女性にささげたと言われており、それゆえにロマンティックで情熱的なメロディーになっているのかもしれません。
「月光」という通称はベートーヴェンが付けたものではなく、のちにロマン派の詩人によってつけられました。
⑦ピアノソナタ第8番 ハ短調 作品13《悲愴》
この楽曲は1700年代末に作曲された作品で、ピアニストとして知られていたベートーヴェンが作曲家としても名をあげるようになったきっかけとなる作品の一つです。
「悲愴」というタイトルはベートーヴェン自身によってつけられており、難聴の症状が始まったベートーヴェンの悲壮感を表しています。
しかし、楽曲全体を通して聴いてみるとただ暗いだけでなく、明るく躍動感のあるメロディーも含まれていることから、当時のベートーヴェンが完全に絶望して途方に暮れていたわけではないことがうかがえます。
⑧ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調「熱情」
このピアノソナタ第23番は前述の第8番「悲愴」第14番「月光」と併せて「ベートーヴェンの三大ソナタ」と称されています。
楽曲では非常に強い音で連続して和音が演奏されていますが、その背景としてベートーヴェンが当時最新のピアノを手に入れたことでより一層表現の幅が広がったからだとされています。
この激情的なメロディーが生まれたのは、ベートーヴェンが当時燃えあがるような恋をしていたからだとも言われています。
⑨バイオリン協奏曲ニ長調
この楽曲はモーツァルトの最盛期に作られた協奏曲で、初演当時は不評だったようです。
というのも、この楽曲は交響曲と協奏曲を結び付けたような今までにない楽曲形式で、独奏するバイオリニストにも管弦との深い関与が求められる、新しい作風だったからです。
協奏曲全体を通して40分をこえる大作ですが、古典的な形式にのっとったシンプルで明るい楽曲なので、聞き手は構えることなくリラックスして楽しむことができます。
⑩エリーゼのために
ピアノ曲として非常に有名なこの作品はベートーヴェンがほぼ完全に聴力をなくした1810年ごろに作られました。
この曲はベートーヴェンが生涯の中で最大の恋に落ちた一人である「テレーゼ」という女性にささげられたと言われています。
現代の日本でも宇多田ヒカルをはじめとして著名なアーティストの楽曲に引用されるなど、非常に人気の高い楽曲です。
”楽聖”ベートーヴェンについて詳しくなることで、クラシック音楽への理解が深まります!
「クラシック作曲家入門」今回はベートーヴェンについてご紹介しました。
難聴というハンデを抱えながらも幅広いジャンルの音楽を手掛け、古典的な形式を踏襲しながらも革新的な作風が魅力のベートーヴェン。
ベートーヴェンについて詳しくなることで、彼自身の楽曲はもちろん、前後の時代に作られたクラシック音楽の名曲もより一層楽しめますよ!